The postmodern has come.

公明党の議員秘書だった頃 第1 公明党議員たちは、集票力のある人物の不正は見て見ぬふりをせよ、と言った

きれいごとで票は集まらない

票を集めてくることはもちろん政治家にとって最も大切な仕事の一つですが、だからこそ不正が起こりやすい場面でもあります。票をお金で買ったり、利益誘導を約束したり、集票のためのなりふり構わない政治家の不正は歴史上数知れず、そのたびに規制も強化されてきました。今回は、公明党に票をくれる人間が、重大な犯罪を犯している可能性があるとしても、目をつぶって頭を下げろ、と言われた話です。

公明党議員への市民相談

公明党参議院議員の山本博司の公設第二秘書だった私は、その日いつものように山本に随伴して、愛媛県松山市で開かれた大きな会合に出席していました。その会合の終わりに、ある創価学会婦人部の女性に呼び止められたのです。曰く、その女性の友人が、職場のことで悩んでいるので相談に乗ってあげてほしい、ということでした。

そのご友人のことを、ここではAさんとしましょう。その日、Aさんはずいぶん憔悴された様子で現れました。目はうつろで、まるで生気がなく、やつれ切っていました。相談内容は、Aさんが勤めていた愛媛県今治市にある精神・知的障碍者向けの介護施設で、虐待が行われているということでした。

山本は、娘が重度の知的障害を持って生まれました。普通、政治家は自分の地盤があるところに居を構えるものですが、山本は娘が東京の施設に入っているので、目黒の自宅を離れず、公明党における担当エリアである四国を訪れるときは香川県高松市の湾岸にあるマンションを使うことを許されていました。そのような経緯があり、また山本も娘の存在をアピールに使っていたことから、公明党内では山本は障碍者福祉を担当することが多かったのです。それでAさんは山本を頼りにいらっしゃったようでした。

Aさんがその施設で働いていたころ、男性入所者が裸にされ、性器をいじられたり、いうことを聞かない入所者に暴力をふるったりという虐待がしばしば起きていたということでした。Aさんは、悩んだ末に今治市の相談窓口に通報したのですが、今治市は真摯な対応をしてくれなかったそうです。一応市から監査が入ったようなのですが、監査の日は事前に施設に通知されていたため、当然施設は見られてまずいことは隠すことができました。施設には監視カメラが設置されているため、Aさんはビデオを確認するように主張しましたが、市の監査官はビデオには問題のある場面は一切写っていないと言い、最終的にAさんは嘘つき扱いされてノイローゼになり、施設での職を失ったのです。

虐待は見て見ぬふりをせよ

今治市の対応が微温的であるのには実は理由があって、その施設を運営している法人の理事長は今治市の元市議で、地元ではずいぶん力のある人物のようでした。だから、市としては強く動いてくれないのです、とAさんはか細い声でお話をされました。山本は、普段から表向きは柔和で包容力がある紳士然としてふるまっていますので、Aさんのお話を真剣に聞いている風でした。しかし、話が施設の理事長のことになると、急に表情を変えたのです。

ひととおりAさんがお話をされ、婦人部の女性と会場から帰られたあと、私は山本に今後の対応について尋ねました。すると、この話はこれで終わりにする。お前は何もするな、と言います。一体どういうことかというと、実はその元今治市議の理事長というのは、公明党のOBなのです。そして地元での影響力の強い人物ですから、いまだに2~3000票ほどの集票力があり、逆らうとその票を引き上げられてしまうのです。

もちろん、Aさんの話を聞いただけですべてが真実であると断定するわけにはいきません。しかし、障碍者福祉を看板にしている山本が、一切確認も調査もせず、票欲しさのために見て見ぬふりをするとはあってはならないことです。

私は、私が山本の事務所に入る前に、山本の公設第一秘書をしていた現松山市議の太田幸伸に相談に行きました。すると、太田はその理事長について、ちょっとしたことですぐ機嫌を損ねる大変めんどくさい性格をしており、選挙のたびに菓子折りをもって挨拶に行っていることを教えてくれました。そしてこう言うのです。

「次の選挙であいさつに行かないかんのは君やからな。まあうまいことやったらええんやないの。文句があるならお前が行って抗議してこい。できるものならな」。

私は次に、公明党愛媛県議の笹岡博之に相談に行きました。笹岡は、かつて現公明党副代表の石田の秘書を務めていた人物です。彼もまた、その理事長の機嫌を損ねるようなことはできないと言いました。「それが、政治というものだからね。しょうがない」。

正義なき政治

彼らは、自分の子供が虐待を受けていても、公明党のためであれば文句を言わず黙っているのでしょうか。大いなる理想のため、子供をいけにえにしても誇りとして胸を張るのでしょうか。

私は、もし虐待が事実であるのならば、そんな人物から票を受けて当選することなど、落選することよりも恥であると思います。汚い票で当選し、汚い人物の言いなりになり、助けを求める人をないがしろにする。公明党をそんな政党にすることが、公明党を立派にすることだとは絶対に思えません。

そういった「良心」を捨てて、「大人」になり、「組織の一員」としてやるべきことをやる。それが、正しいことだと思ってるのかもしれませんが、「良心」は、政治家が一番捨ててはいけないものです。目の前の人間の幸福ではなく、あるべき社会に順応することを良しとし、人にもそれを求める。その行き着く先がどれだけ大きな不幸だったのか、人類は80年前に経験しました。

テクニカルなことを言っても、施設入居費で収入を得ながら入所者への虐待を放置しているような人物が身内にいることは、リスクでしかありません。今後何かの拍子に明るみになった場合、取り返しのつかないダメージになるのですから、速やかに調査し、問題があれば処置を行うのが賢明な組織というものです。私は、公明党関係者ならびに支持者の皆さんが、良心をもって今後の行動を決断されることを心から願っています。